ゴミ屋敷あれこれ
点在するゴミ屋敷
昔からゴミ屋敷の相談はあった。相談員になりたての頃は、非日常的なゴミ屋敷と言う環境に困惑していたが、今は年間を通じて一定数の相談があり、すっかり慣れっこになってしまった。
社会生活を問題なく送っている常識的に見える人が、ゴミ屋敷の住民だったりする。
ゴミ屋敷の場数を踏むと、ゴミ屋敷の住人と特有の体臭がかぎ分けられるようになった。
満員電車の中で、どことなくほんのりゴミ屋敷特有のが染みついた衣服を身に着けている人がいる。「小奇麗な身なりをしているのにもしかして?」と思うこともある。
地域をよく見れば、ゴミ屋敷は点在している。住人は、老若男女様々だ。
ゴミ屋敷の住人は、年齢を問わずふつ~うに存在する。
怠惰で片づけられずゴミ屋敷になっている人はともかく、福祉制度が必要な人に関しては、ゴミを片付けるところから支援が始まる。
ゴミ屋敷とセットでよくあるあるのが、電気・ガス・水道が故障したまま・料金の滞納で止められていてライフラインが確保できていない事態に陥っている。
そうなると、ゴミを片付けて修理ができる状態にすること・ゴミを片付けながら通帳や印鑑・現金を発掘をまずしなければならない。
ゴミ屋敷・排除される人とそうじゃない人
ゴミ屋敷の片付け作業を展開していると、ご近所さんが目ざとく気づき、これがきっかで「この町から出てってくれ!」っていう声が聞かれ、そういわれたからじゃないが、地域で暮らすことが望ましくない人に関しては、ゴミを片付けて地域で暮らすことをあきらめて福祉施設の入所や医療保護入院などを調整することもある。
出てってくれって言うご近所がさんが、意地悪なわけではない、そう言わせる何かがあるのだ。この展開の構造は、「さみしん坊館の住人」のケースと一緒だ。
そうじゃない人も存在する。
バツイチで独り暮らし。長い期間かけて、ちょっとずつゴミ屋敷になってきた。
気にかけてくれるご近所さんが、数日間電気がついておらず「もしかして、孤独死?」と心配になり、警察を呼んで安否確認をした。本人はけろっとして、元気であったが、受け答えが明らかにおかしい。食事もとっておらず、ちょっと見ないうちにカリカリに痩せている。
警察官が、何とか家族を探して、某相談所に相談に行くように助言をしてくれたらしく、数日後、家族が来所した。
子供たちが言うには、宗教二世で何とか子供たちが思う普通の生活に人生の軌道修正ができたが、その原因を作った親(ゴミ屋敷の主)に関わりたくないというのだ。
親子の縁を切りたい…。
やれやれ~。
親子の縁を切る方法はありません!!
しかたないなぁ~ 自己決定でやっていくか~
その後、病院で検査してもらったが、栄養失調と脳の萎縮が見つかった。
物事の判断する力が、危うくなっている。
こんなことがないように、とりあえずご近所さんが食事を届けてくれているが、その行為にいつまでも甘えるわけにはいかない。ゴミを片付けてライフラインを回復させ、またこのような状態に陥らないように支援につなげなければならない。
判断力が危うくなった場合、子供が本人に代わって意思決定をしてもらいたい。
それが、支援している人の後ろ盾になる。
判断力が危うい人の、自己決定?
そもそも、自己決定できるの?
でも、子供が関わらないといった限りには、自分で決めてもらわなければならない。
しかたないなぁ~。自己決定でやっていくか~
自己決定を促すものとは?
まず、ゴミを片付けることを、本人に了承をもらわなければならない。もちろん、清掃業者の支払いは、本人がすべて負担する。
今回のゴミの片づけは、15万円くらいとおかみは予想をする。
大まかな金額を伝えて、ゴミを片付けるように働きかけるのだが、「自分でできる、ぼちぼち片付ける」と言い、わかってくれない。
何度か、このやり取りを続けていたら、ご近所さんが集まってきた。
ご近所さんも一緒に説得をする。
それでも、「自分で片づける」とゴミ屋敷の主は言う。
しびれを切らして、民生委員さんが怒鳴る。
「ゴミを片付けないのなら、この町から出て行ってくれ!」「あんたのことを心配しながら生活をするのは、ごめんだ!」
取り囲んでいた、ご近所さんもうなずく。
その瞬間、ゴミ屋敷の主の表情が変わった。
「そんなに心配かけてるなら、片づけます」という返事だった。
👏👏👏👏👏パチパチパチ~
「よく決心した!よかった、よかった」
ゴミ屋敷の主の言葉に、皆が拍手をして喜び合った。
さて、忙しくなるぞ!
おかみは、ゴミ屋敷一掃作戦の旗振り役を立候補した。
皆で、一気に片づけてしまおう!!
エイ、エイ、オー!
この町から出ていってくれ!
「この町から出て行ってくれ!」
酷い言葉だ!だが、愛にあふれている。
民生委員さんの「出ていけ」の言葉の裏には、「ここにいてほしい」と言う意味が込められている。
ゴミ屋敷の主は、子供には見捨てられたがご近所さんには恵まれた。
単にご近所さんが、いい人達だったわけではない。
ゴミ屋敷の主は、人生に失敗があったみたいだが、この町で再出発をして誠実に生きてきた。だから、ご近所さんも知らん顔せず、「困った人だ」と思いながら、おかずをおすそ分けしてくれたり、ゴミ屋敷の片付けを手伝ってくれた。
ピンチの時に、その人の生きざまが、その後の人生を左右する。
おかみも、ピンチの時に手助けしてもらえるような生き方をしたい。
福祉制度を利用する年齢になれば、地域生活を卒業せざるおえない時が来る。
その時に、地域から排除される人ではなく、笑顔で見送ってもらえるような人になりたい。